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名古屋地方裁判所 平成8年(わ)1857号 判決

主文

被告人一孝建設株式会社を罰金一〇〇〇万円に、被告人鵜飼一三を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人鵜飼一三に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(認定事実)

被告人一孝建設株式会社(以下、「被告会社」という。)は、肩書所在地に本店を置き、建築請負業等を目的とする株式会社であり、被告人鵜飼一三(以下、「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括している者であるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空外注費を計上するなどの方法により、所得の一部を秘匿したうえ、

第一  平成四年八月一日から同五年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が、九二二二万九五二五円であったにもかかわらず、平成五年九月三〇日、愛知県一宮市栄四丁目五番七号所在の所轄一宮税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三九六七万一一二五円で、これに対する法人税額が一一九九万二三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三一七〇万一五〇〇円と右申告税額との差額一九七〇万九二〇〇円を免れた。

第二  平成五年八月一日から同六年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が、五八五四万一八三五円であったにもかかわらず、平成六年九月三〇日、前記一宮税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二六三四万一〇〇二円で、これに対する法人税額が八二五万三六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二〇三二万八六〇〇円と右申告税額との差額一二〇七万五〇〇〇円を免れた。

第三  平成六年八月一日から同七年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が、一億三五七〇万八六〇〇円であったにもかかわらず、平成七年一〇月二日、前記一宮税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億〇〇六一万二四五六円で、これに対する法人税額が三六四三万七〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四九五九万八〇〇〇円と右申告税額との差額一三一六万一〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一  被告人の公判供述

一  被告人の検察官調書(乙二、三)

一  浅野素(甲一七)、鵜飼たか子(甲一八)の検察官調書

一  査察官調査書(甲六、七、九)

判示冒頭の事実について

被告人につき

一  被告人の検察官調書(乙一)

被告会社につき

一  登記簿謄本(乙五)

判示第一の事実について

一  確定申告証明書(甲二)

判示第二及び第三の事実について

一  査察官調査書(甲五、八)

判示第二の事実について

一  確定申告証明書(甲三)

判示第三の事実について

一  確定申告証明書(甲四)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は平成七年法律九一号附則二条二項前段により改正後の刑法(以下、「刑法」という。)四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間刑の執行を猶予する。

さらに、被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金一〇〇〇万円に処することとする。

(量刑事情)

本件は、被告人が経営する被告会社の法人税確定申告に際し、架空の外注費を計上するなどの方法を用いて、三年度にわたり計四五〇〇万円弱の法人税を免れたという脱税事犯である。被告人は、個人の自由になる金が欲しい等の理由で、下請会社に架空外注費の請求をさせて支払う形を取り、その中から現金でバックを受ける等の手段などで本件に及んでいる。動機、犯行の手段、態様いずれも悪質といわねばならない。脱税額も相当額に及んでおり、三年度にわたって行われていること等を併せ考えるとその責任は重いといわねばならない。

しかしながら、被告人は本件につき反省の態度を示し、修正申告の上、本税、重加算税等を納付していること、被告会社が地方自治体から指名停止処分を受けるなど、社会的な制裁を受けていること、交通関係の古い罰金前科除いて前科等はないこと、その他、被告人のこれまでの社会的貢献や現在の健康状態をも考慮し、主文のとおり被告人に対する懲役刑の執行は猶予した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 田邊三保子)

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